見知らぬ世界⑥(白い怪物と少女)

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今日は冒険するのだ。

彗は出かけてしまった。
総一郎は顔を洗いに行った。
今、ここには僕しかいない!

さぁ、出発だ!

未知の世界へ。

実は、今まで彗に見張られていて、自由に外を出歩くことなどできなかったのだ。

だが、外の世界は何もなかった。

建物らしきものはあるのだが、人が住んでいたのは数十年前だろうという感じ。

一応、道らしきものはある。

やがて、建物が密集しているところへやってきた。

途中に壊れた水道管をみつけた。

水がちょろちょろと出ていた。

ものは試しと口をつけたら、普通に飲める品物だった。
彗は、こうしたところから水を持ってきているに違いない。

コンクリートが剥き出しになっている建物の間を歩いて進む。

ドアもなく窓もない。
人は当然いない。

廃墟の町。

僕は・・・いろいろ考えた。
でも、考えなどどうでもよくなった。

たとえ、この世界が核戦争で滅んだ後の世界だとしても。
偶然、僕達だけが生き残っていたとしても。

どうでもよかった。

家族も、友達も、親戚も死んだのだろう。

それでも・・。

心がそれ以上考える事を拒絶しているようだ。

なぜか、この街に興味と好奇心を惹かれて、きょろきょろと見て回る。

楽しい。

ちっとも楽しくないはずの状況なのに。

ここから帰ったら、彗がいる。総一郎がいる。
戻って、目を閉じたら・・無条件でまた明日がくるのだから。

「そう、その通り。でも、明日が来なかったら、あなたはどうするの?」

「え?」

建物の裏側から声が聞こえた。

たしかに、人の声が。

鈴を振るような少女の声。

「誰かいるの?」

「あなたのすぐ近くに」

僕が建物の向こう側に回ると、小さな影が見えた。

砂の彫刻。

やがて、風がやむとそこには一人の少女が立っていた。

「はじめまして、浮雪」

「どうして、僕の名前を?」

少女は浮雪の顔をじっと見つめた。

「?」

その網膜が濁っているのを見て、浮雪は気づいた。

「きみ・・・目が」
「ええ、見えないわ。でも、そのかわりあなたの心が少しだけ見える」
「・・心」

少女はにっこりと笑った。

「私も、その人のところに行ってみたい。あなたの心に蓋をしているその人のところに」
「・・」

「そこにきっと答えがある」
「答え・・」

次の瞬間だった。

とてつもなく大きな怪物に襲われたのは。

「わっ!!!」

「シルバー」

食われる!
彗に食べられる前にっ!!
こんな怪物に食われるくらいなら、彗に食べてもらった方がよかった・・。

観念して、目をつぶると頬にくすぐったい感触。

「ふふ・・ふふ・・・やだ・よょ!!」

「シルバーよ。私の友達」

怪物は、なんと彼女の飼い犬らしい。
どう見てもポニーくらいの大きさがある。
白い毛の巨大な犬。

彼女はその犬の背に乗ると、僕の後をついてきた。

「きみの名前は?」

「白爪 弥生」

学校に帰ると、総一郎が・・

なんと正座で玄関前に座っていた。

「浮・・ふゆきぃ~~~!!」

縋りつくような調子で叫びながら、総一郎はなんとか正座を解いた。

「何してんだよ?そんな格好で」
「おまえのせいだぞ~・・矢崎が・・あの恐い人が・・しびびびび・・」

総一郎は、立ち上がろうとして失敗し、浮雪につかまってようやく体勢を立て直す。

「おまえが勝手にどっかいっちゃうから、矢崎が・・『どうして、おまえが見ていないんだ!あいつは足を怪我しているんだぞ・・。オレが探してくるから、おまえはここで正座をして待っていろ!』・・と言って行ってしまったんだよ」

「断ればいいじゃないか。正座なんかやだって」

「そんな事言えるか!あの時おまえいなかったからそんな事言えるんだよ。
そりゃもう、世紀末大爆発という感じだったぞ」

「ふふ・・ふふふ」

「?」
「!」

後ろを振り返ると、弥生が笑っている。

「・・?」
「本当に恐そうね」

「・・ああ、彼女。出かけてたら会ったんだよ」
「へ・・」

総一郎が呆然と弥生を見ている。

「・・?」

弥生が不思議そうな顔をして総一郎を見つめていった。

「草薙・・総裁の息子さん・・?」
「そうだけど・・なんで父さんの事を」

「えっと彼女はね」
心が読めるらしい・・と僕が言う前に、弥生が口を開いた。

「何度かお会いした事が・・私の父と・」
「?きみは?」
「白爪弥生、・・父の会社の事で」

「白爪・・旧財閥の!」

「?」

お金持ち同士にしか通じない会話を、二人はしている。

「白爪・・コンツェルンと聞いた事がある」

僕の隣で気配もなく突然声がした。

「彗?!」

「・・でかけるんなら、一言かけて欲しかった」
「・・ごめん、心配かけたみたいで」
「・・べつにそんな事はない。足は大丈夫なのか」
「うん」

「矢崎!」

総一郎が駆け寄ってくる。

「ああ~~~こういうわけなんだよ」

総一郎がまるで僕が見たことを見てきたみたいに、的確に話した。

「ようこそ、白爪さん」
「弥生でいいわ。はじめまして、彗」

こうして少女と1匹が加わった。


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