見知らぬ世界⑨(総一郎の災難)

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その日は全員で大幅な探索を始める事にした。
弥生の予言もあるし、いいかげん彗や総一郎だけでは回りきれなくなったのだろう。
それと…食料に限りが見えてきたのが原因らしい。

「皆が見える場所だけを行動範囲としよう」
彗が言った。

勝手にいなくなられては二度手間になるから、と冷徹に話す。

「特に浮雪。おまえにはその傾向がある。気をつけるように」
「は、はい!」
…まるで、師匠に技の癖を注意されている弟子のようだ。

あの日以来、ちょっと変に彗を意識するようになってしまった。
でも、彗がそんな素振りをまったく見せないので、普通に接せられるようになってきている。
どういうわけか、それがとてもありがたかった。

「特に何か目ぼしいものを見つけたら、声をあげて皆に知らせる事。
それが得体の知れないものだった場合は、総一郎を飛び込ませる!」
「な、なんで?!」
総一郎が悲鳴をあげた。

「見たところ、おまえが一番逃げ足が速い」
「自分で飛び込めばいいじゃん!」
「オレは皆を指揮する」

総一郎はぶつぶつ言いながらしゃがみこんだ。

「シロに守ってもらえばいいんだよ」
と僕は慰めたが、総一郎は首を振って俯いた。
「僕みたいに上品な犬なんだ。矢崎とは違う…」

「なにか質問は…?」
彗が追い討ちをかけるように総一郎に聞いた。
「ありません!」

「では、出発しよう」

こんな遠くに来たのは、弥生を見つけたあの時以来か…。
いや、あれより距離があるのかもしれない。
ただ、皆で話しながら歩いているせいで距離をそれほど感じない。

たどり着いたのは、またも見知らぬ街だった。

「彗、そういえば帰り道覚えている?」
「ああ、もちろんだ。おまえは覚えていないのだろう」
「…えへへ」
僕がしかたなさそうに笑うと、彗は溜息をついた。
「だから、絶対に離れるなよ」
「へい!」

「弥生さん、何か感じる?」
「ええ、たぶんここに何かある…そんな気がするわ」
「もしもの時、僕は飛び込まないといけないんだけど…怪物とかそんな反応じゃないよね?!」
酷く怯える総一郎を見て、弥生は笑った。
「大丈夫よ、きっと”人”だから。それに、もしもの時はシルバーに守ってもらいましょう」
「BOWBOW!」
弥生の大きな犬がよいお返事をする。
「ぼ、僕は君なら守れるよ。ただ自分の身になると自信がないだけさ!」

「何を言っているんだ、あいつは。自分の身も守れない奴が人の身を守れるか」
胸を張る総一郎を遠くから眺め、彗は呟いた。
「まぁまぁ…。総ちゃんをかっこよくさせてあげようよ!」
僕は彗を宥めつつ、あたりを見回した。
総一郎を危ない目に合わせるようなものはなさそうだ。

「じゃあ、探索を開始する」

彗の一言とともに僕達はあたりに散った。

「・・?」
なんだか、見られている感じがする。
何もいないのに…。
横とか後ろとかが気になる。

「あ、彗」

目の前から彗が現れた。
こちらを見ていたその視線が、突然鋭く壁の方へ向けられた。

「浮雪、オレから離れるなよ!」
「?」
「…いる!」

「やぁ!矢崎!何か見つけた?」

総一郎が手を振ってやってくるのが見えた。

「総!よけろ!」
「は?」
次の瞬間。
横から飛び出してきた影に総一郎がぶっ飛ばされた。

「チッ!」
同時に彗が飛んだ。
そして総一郎の身体を後ろに蹴り飛ばす。

総一郎の身体は直角に飛んだと見ていい…ふいに横から殴りかかられ片方の壁側に飛び
壁にぶつかる瞬間、彗に蹴り飛ばされ道のほうへ吹き飛んだのだった。
ちょうど、選手を交代するような感じで総一郎が飛んだ後で彗が相手と対峙する形になった。

僕が事態を確認する間もなく、対峙した二人は攻撃を始めていた。

相手の動きは早い。
突きも蹴りも風をきるように放たれる。
逆に彗の動きは柔らかい。
まるで演舞をしているかのように相手の攻撃を受け流しているようだ。

「おまえは宇宙人かっ!」
相手の声が聞こえた。
「オレは人間だ」
彗の声。

僕はこの光景を呆然と眺めながら、やっぱり彗は地球人っぽくないんだ…なんて考えたりしていた。

「二人とも人間なもんかっ――――!!」

その場を切り裂くような声。
鼻血を流しながらの総一郎の心の叫び。

ふと二人の動きが止まった。
その隙をついて、彗が相手の首筋に手刀を打ち込んだ。
「う・・」
相手が倒れる。

「殺したのかっ!」
総一郎が鼻を押さえながら飛んできた。
「まさか。それにこいつはそう簡単に死なないさ」
倒れた相手を見て彗が答える。

相手は…以外にも小柄の少年だった。
だが、まくりあげたTシャツから出る二の腕についた筋肉が、一般人でない事を物語っている。

「なんらかの心得があると見える…フフフ…面白い」
そう言って、オレンジ色の目を細め、凶悪に微笑む彗は本当に侵略宇宙人のようだった。

続く

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