-彩とリュー4-

宇宙人1/2

-なんだよ?-

-ロイにチョコレートだって…-

リューがロイを連れて食堂に行くと、これまで見たこともないほどゴキゲンな顔をした彩が、向かいに座っている凍牙と話していた。

凍牙の前には、手作りチョコ。

それは、間違いなく先日彩が作っていたものだ。
笑顔の彩とは対照的に、ムッとした表情を崩さないままの凍牙。

-妙な光景だった-

当然、ロイも不思議そうな顔でそれを見ている。

「リュー、おはよう」

振り返ると第5部隊の奴が肩に手を置いていた。
そいつは顎でくいっと彩と凍牙を指しながら言った。

「ほら見てみろよ。日本の姫さんは金髪の坊やに夢中だぜ」
「…」
「妬くなよ、リュー」

からかい半分の口調に、反論する気も起きなかった。

-なにが、なんだかわかんねぇ…-

わからない苛立ちがリューを襲う。
ロイはそんなリューの前をすっと歩いて、彩のそばにいった。

「彩さん」
彩が振り向く。
「なに?」
声は硬い。

「…ありがとうございました。あの時、お礼らしいお礼も言えなくて…」
ロイの声は、擦れて消え入りそうだ。
しゃべるの自体が辛そうにも見えた。

彩は答えた。
「ああ、あれ。気にするな、そう意味があるものじゃないし、ほんとに余っただけだから」
「ともかく、お礼が言えてよかったです」
お礼を嬉しそうに言う声にはとても聞こえなかった。
まるで、台本を棒読みしているかのような、それ。

ロイは、リューの方を向きかえると黙って去っていった。
こころなしか、瞳が潤んでいるようだった。

「おい!」
「なんだよ?」

部屋に戻る途中で、リューは彩に声をかけた。
…というより、無理やり呼び止めたのだ。

「オレ、わかんねぇよ。おまえの行動」
「わからなくてもいいだろ。僕がどういう行動をしようが、おまえには関係ない」
「あのな…オレには確かに関係ないかもしれないけど、ロイは・・傷ついたんだぞ」
「なんで!?」
彩とは思えない怒鳴り声に近い反論。

「なんでって…余ったものやるとか、全然気持ちないとか…」
どういうわけか、リュー自身も辛くなってきて、言葉が詰まる。
だが、彩はそんな様子も無視してつかつかと寄ってきて、リューの胸倉を掴んだ。

「向こうだって気持ちがないんだから、ああ言うのは当たり前だろ!」
苛立ちと怒りを含んだ言い方。
「優しさだってのかよ!」
襟元を掴んだ白い手を振り払い、リューはたまらず怒鳴った。

「そうだ、ロイだって…」
「ロイが、おまえの事好きだって、どうして気がつかない振りするんだ!」
「うるさいっ!」
「どうして、傷つけるような行動とるんだよ」
「…僕は凍牙が好きなんだ。ロイの気持ちには答えられない。同情で付き合えとでも、おまえは言うのか?だとしたら、とんだ優しさだな!履き違えもいい加減にしろ!」

なにかが、食い違っている…。

リューは、苛立ちが頂点に達するのを感じた。

「おまえ…なんなんだよ」

自分でも驚くほどの冷たい響きがその中にはあった。
ビクリと彩が震えた気がした。

だが、口が…止まらなかった。

「今日は部屋に帰る気がしない。違うとこに泊めてもらう事にする。おまえといると無性にイライラする!」
「…戻らないのか」
「うるさいっ!おまえの顔見たくないんだ、もう」

この場から早く立ち去ってしまいたい。
リューは、彩のほうを振り返りもせずに廊下を歩いていった。

次の日。

彩はトレーニングに遅刻したため、掃除をやらされる事になった。
凍牙と二人でトレーニング場を右往左往している姿は、少しも嬉しくなさそうだ。

「そこ!埃落ちてるっ!」
凍牙の声が飛ぶ。
「…」
彩はもそもそと動いて、モップでそこをこすっていた。

-あいつ、トロいんだよ-

リューは入り口のところで、じっと立っていた。

-彩は、決して手際がいいほうじゃない-

-なのに、プライドは高い-

-だから、こんな事…-

バン!

と耳をつんざくような音がした。

「ちょっと!そんなに強くロッカーを閉めなくたっていいじゃないかっ!」
凍牙の声。
次の瞬間、物凄い勢いでドアが開いて彩が出てきた。
酷く不機嫌を露にした表情で、早足のまま歩いていく。
リューの存在にも気づかない様子だ。

「あー・・いっちゃった」
続いて出てきた凍牙が溜息をついた。

「おい…」
「は?」

凍牙が横を向くと、明らかにドアに額をぶつけたと見られるリューがいた。
「なんだい?リュー・ウェン」
「凍牙…彩とはどうなっている?」
「・・・どうして、きみがそんな事を聞くのかな?もしかして恋人に対する嫉妬のつもり?」
ニヤリとする凍牙。
それほど、オレたちの疑惑のある関係は広まっているという事だ。
だが、今はそれを否定するよりも、先に聞きたいことがある。

「あいつと、何か取引をしているんだろう」

続く

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