-世界一の宝物 3-

宇宙人1/2

ところで、いきなり時代は数百年さかのぼる。
ここは、バストール国という国。

海と砂漠と森に囲まれた文化の交流地だ。

その国の王はサングと言った。
まだ少年だが、間違いなく彼は国王だった。
だが、やはり少年だった。

「こんな執務室なんかに篭ってられるか!」

彼はある計画を立てた。
親友と禁断の森へ行って冒険をするのだ。
しかも今すぐにっ!
さっそくサングは、別室で彼の執務が終わるのを待っていた、隣国の王トトのところへこっそり向かったのである。

そのトトは、今まさにパンツを脱ぎ捨てたところだった。
半日かけてバストールに来たので、着替えをしていたのだ。

「トトーー!!遊びに行くぞ!・・・ぎゃぁぁぁ!!」
「ぎゃぁぁぁ!!!」

片方は、下半身丸出し。

「へ、変態!!」
「どっちがだよ!!」

その後は、お互い猛烈に罵り合っていたが、やがて腹を抱えて笑うはめになった。
これが少年王たちの日常だ。その後、トトはちゃんとパンツを履いた。

サングは、トトに冒険へ出かける話を持ちかけた。
だが、大抵のことには賛成してくれるトトが今回ばかりは乗り気ではない。

「だって、禁断の森に入ったものは二度と出て来れないっていうじゃないか」
「だからさ、そういう噂を流しているってことは、もしかしたらお宝とかあるかもしれないじゃないか!」
「たとえお宝があったとしても、それは人間の手で触れてはいけないものかもしれないよ」

トトは信心深い。加えて霊感が強いので、禁忌の場所には近づかないようにしている。

「ぷーーー」

トトならついて来てくれるかと思っていたサングは頬を膨らませる。

「じゃあさ、森には入らないから入り口まで行ってみたい」
「絶対に入らないね?ちょっと覗くだけだよ・・・」

そう言いながらも、トトが茶色い瞳をクリクリ動かすのをみて、サングは心の中でにやりと笑った。
トトは好奇心の塊のような奴だ。
入り口まで行ったら、怖がりながらも中を見たいと言い出すに決まっている。
そして、何よりトトの足を動かす最大の武器をサングは持っていた。

・・・・

恐る恐る森の入り口まで行って、トトはサングの服を引っ張った。

「ここから先は危ないよ。やめておこうよ」
「へぇ、おまえ気にならないの?この森の中がさ」
「気にはなるけど・・・」

モジモジと身体を揺らすトト。
でも、よく冴えた勘が”先に進んではいけない”と訴えている。

「俺がいるさ!」
「・・・」

サングの背後には、強い太陽のような黄金のオーラが輝いている。
それを見えるのもトトが霊感が強いからなのだが、いつも立ち止まろうとして、この尋常ではない力に引っ張られてしまうのだ。

「う、うーん・・・・でも、危なくなったらすぐに脱出するんだよ!」

せかせかと行ってしまうサングの背に言葉を投げかけながらも、トトも後を追った。

「なんだ。別に普通の森じゃん」
「・・・!」

ぶらぶらと歩いているサングだったが、隣を歩くトトが急に立ち止まったので、あわててその視線の先を見る。

「なにかが近づいてくるよぉ・・・ぉ~ぁぁ!!」

震える声で、トトは叫んだ。

「気持ち悪い声だすなよ!!本気で怖いだろ!!」

怒鳴るサングの顔に、さっと影がかかった。

「?!」

気配に前を向きなおすと・・・

「ぎゃぁぁぁ!!!!」
「これ、大きな声をあげるでない」

白い髭をたくわえた仙人のような老人が立っていた。

「じいさん、どこから沸いて出た!!」
「ほぉほほほほ・・・」

今までどこにもいなかったのに、突然目の前に現れたこの老人は何者か?
少なくとも、すばやく走ってきたのではなさそうだ。

「見たところ、生物反応は感じられない。極めて高度な念で作成されたエーテル体・・いや、見事に実体化している・・・」

トトのオカルト好きにしかわからないような発言を聞いた老人は、納得したように目を細めた。

「いかにも、わしはこの森を守る番人。もはや肉体を持たない死者じゃ。だが、ただの死者ではない。わしの意識はこの霊体を包み込み完全な具現化を実現している」
「わけわからない話はいいから、じいさんお宝をよこしな!」

居丈高に手を差し出すサングを見て、老人はため息をついた。

「宝なんぞ、わしが持っているわけなかろう」
「失礼なじじいだな!こうなったら、力づくでも・・・」
「・・・」

老人はしかたなさそうにうつむくと、懐から何かを出したように見えた途端、
「!」
突如出現した獅子がサングめがけて牙をむいた!

「人の話の腰を折るんじゃねぇ!!」

ボカッ!

サングのパンチを食らった獅子は、情けない悲鳴をあげながら消滅した。

「・・・あ」
「・・・」
「いい、今の見た?!」

トトが首をガクガクさせながら、二人の間に入る。

「お二人とも、まずは落ち着いて・・・今の、すごいでしょ!すごいっしょ!!」
「・・・」
「・・・」

呆然としている二人の間で、トトはなにやら一人で興奮している様子だ。

「つまりは、ねぇ!今のは幻獣というやつですよ、ね!そこの人!あなた幻獣ツカエますかー!使えるんですね!スゴイデスネ!だがしかしですね、このこのお兄さん、はい!この人。この人はー、なんと幻獣破っちゃったのね、素手で!素手だよ、スゴイですねーー!」

いきなり、オカルトオタクむき出しのしゃべり方のトトに、二人とも引き気味だ。

「ちなみに、アナタのその幻獣。媒体が紙のところは、東洋の式神をヒントにしているのカナ?普通こういうところでは魔方陣を使うものだけど、よく考えたら、アナタが霊体!うっかりしたら魔方陣から違うところに飲み込まれてしまう可能性もあるネ。それよりも、サンが幻獣を殴りつけたところはすごいよ。こう・・・拳にオーラを集中させて・・・」

「どうでもいいから、変な抵抗はすんな。お宝の場所を吐いちまいな」
「わしは、番人だと言っただろう。たやすく渡すわけにはいかんな。自分で探せ」

フン!と視線を反らしてみせる老人に、サンはにんまりと笑顔を見せた。

「やっぱりあったな!お宝!!」
「な・・なに・・・」
「別に俺たちはお宝を探しに来たんじゃない。この森を探検しに来ただけなのさ。でも、あんたはお宝の存在を認めた。もう、俺たちのものだぜ!」
「う、うぬ・・・小僧がっ!!」

「・・・そう・・・か。私は、森に入っただけなのに、なんでお宝なんて話が出てくるのか、今まで不思議だったんだよ。ああ、そういう流れだったんだね。だから、この森には番人がいたんだねぇ」

一歩遅くトトは理解できたようだ。一人頷いている。

「たとえ、幻の箱の場所にたどり着いても、それを開けられるかどうかは主たちの技量にかかっている。下手をしたら、命がないぞ」
「幻の箱・・・」
「オカルト的な話だ!!」

先ほどまで怖がっていたトトが瞳を爛々と輝かせて、食い入るように老人を見つめた。

「よし、サン!私たちはそれを見つけにゆくぞ!」
「おう!トレジャーハンターS&Tの結成だ!」

「わしとて、一応番人!そう簡単に行かせるかっっ!」

老人はまた懐から、今度は複数の獣を出現させる。
それらは二人に襲い掛かった。

「だから、何度やっても無駄だ!」

サングの正面から向かった獅子は、今度は視線だけで消滅した。そして、左右の獅子も両腕を伸ばしただけで吹き飛んだ。

「うぬっ!」

老人の目に映る他を圧倒するオーラは、サングの方からだけではなく、もう片方からも見えた。
それはサングの黄金色と違い、もっと落ち着いた深い色であったが、攻撃を繰り出すときのみ燃え立つ炎の色へ変化した。

トトは、獅子の口を押さえていた。
今にも噛み砕かれそうな寸前で、

「サングにできて、トトちゃまにできないわけがないっ!!うほぁ!!!」

トトの両腕が赤く燃え立ち、獅子の巨大な口角を力任せに引き裂いた。
そうして、他の2匹も倒された。

「さぁ、先に進むぞ」

一人は、余裕の笑みさえ浮かべた黄金を背負う少年。
もう一人は、おかっぱ頭を振り乱しながら戦いの炎に包まれている。

ヤダ!この子たち、怖いっ!!

と思ったかどうかは定かではないが、老人は顔を青ざめさせて、叫んだ。

「くっ、こうなったら最終手段!落とし穴!!」

いきなり、二人の少年の足元に穴が開いて、二人は消え去った。

「この世からはさようならじゃ。じゃが・・・」

万が一、あの二人が宝にかかっている呪いを解いて、宝を手に入れることができたら・・・・。

「わしもそろそろ疲れたのぉ~」

宝を守護して数百年。
誰もあの箱を空けたものはいない。
しかし、あの少年たちなら・・・。
それも面白いと、老人は思った。

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