「ここはどこだろう?」
目の前には、戦争で破壊されたかのような廃墟。
黄土色の砂塵が舞い上がり、目に痛い。
しかし、何度目を擦っても、目の前にある光景は変わらない。
「なんなんだよ・・」
つい先ほどまで、兄の達也と玄関先で話していたのだ。
「また、そんなホストみたいな格好で、大学行くのかよ~」
「お兄ちゃんがかっこいいほうがいいでしょ?ふゆきくんは!」
「ここのところ近所で、噂になってイヤなんだよ。柊くんのお兄さんって何の仕事してんの?
って!」
「人の事は気にしない、気にしない。お兄ちゃんはかっこよく!ね!」
「まったく~」
・・・・
突然、兄の像がぶれた。
眩暈か?
と思って、目をこすった瞬間・・・。
次に見たのは、この光景だった。
まわりを見回しても、あるのは崩れかけた建物だけ・・。
家も街もない。
「一体どうなって・・」
しばらく、そこで呆然としていた。
僕は何か悪い夢を見ているに違いない。
もしかしたら、急に心臓麻痺とか起こして、現実では意識不明・・
遠くに達也兄の呼ぶ声が聞こえやしないか?
「ふゆき!しっかりするんだ!大丈夫。おまえは、死にしゃしない!!」
残念ながら、耳に聞こえるのは、ビュービューという風の音だけ・・。
「もう~!!どうなってるんだよ~!!」
頭を抱えた僕の耳に、ザリザリ・・と砂を踏む音が近づいてくる。
まさか、宇宙人!
恐る恐る視線を向けた先には・・運動靴と、ジーパンが見えた。
ああ、普通の人だ!
と、思って見上げると・・・
オレンジ色の瞳と目が合った。
「おまえ・・」
と、言う声は独特の低い響きがあって・・
砂塵のせいで見間違えたのかと思ったが、髪が銀色だった。
「人間か?」
淡々と聞いてくる口調は冷静そのものだ。
「あ、この世界の人ですか?」
よくあるじゃないか。
こんなに長い銀髪を持った人物がいるとは、きっとファンタジーの世界に違いない。
違いない!
取りすがるように聞く僕の顔を一瞥して、目の前の相手は
「おまえこそ、どこの世界の人間なんだ?」
と聞いた。
「ぼ、僕は地球から来ました。柊 浮雪」
「オレも地球から来たんだ。西森中学の運動場から」
「西森中から来たのか、隣町じゃん。家近いね!」
って・・それじゃ、こいつもっ!!!
「運動場で、サッカーの試合をするというので、ゴールキーパーを頼まれた。
ゴール前に立ったら、突然、ここに来ていた」
「そ・・と、いうことは、これは現実?!」
「現実でなくてなんだ。少し驚いたが、現実さ!」
知らない相手の・・あまりにもキッパリと言い切った態度に、僕はものすごいショックを受けた。
「ああ・・」
膝がガクンと崩れ落ちる。意図していたわけではないのに、もう身体に力が入らない。
「ショックはよくわかるが、何はともあれ先に探すのは、食料と水だろう!」
僕は、じっと相手の顔に見入ってしまった。
なんなんですか、あなた?
なんでそんなに冷静なんですか?
どうしてそんなに素敵に無敵なの?
「そんなところに座っていないで、行くぞ!」
「はぁ・・・どこにですか?」
「んなもん、屋根があるところに決まっている」
「・・・」
しかたなく、僕は立ち上がろうとしたら・・
「おっと!」
やはり、足に力が入らなくて躓いた。
「ちゃんと立て」
と言って、その人は腕で僕の身体を少々乱暴に引っ張り上げる。
細い腕のどこにそんな力があるのかと思うほど、ぐいっと持ち上げられ、立たされた。
「しっかりしろ」
そう言い、僕を立たせた後、そのままスタスタと行ってしまう。
「あの・・」
「なんだ」
「まだ、あなたのお名前を聞いていない・・」
そこに立つ人は、シベリアンハスキーと狼犬を合わせたような顔をこちらに向けて言った。
「オレは、矢崎 彗だ」
