今日も、彗はどこかに出かけていった。
食べ物だけでなく、何かを探しているようだ。
何かとは・・
たぶん、人だろう。
この世界にまさか2人だけとは思わない・・思いたくない。
きっとどこかに誰かいる。
そんな希望は彗だってもっているはずだから。
その日の夕方。
帰ってきた彗は、白い小さな犬と・・・見知らぬ人を連れていた。
「ここに住んでいるのか」
「ああ、もう一人いる」
足が治りかけた僕が玄関口まで出て行くと、その人は「ああ、よかった」
と、言って近づいてきた。
「は・・Hello!」
「Hello!」
現れた人は青い目金髪の男だった。
言葉が通じるだろうか?
「この人は、彗の知り合い?」
「いいや、知らない奴だ」
てっきり、外人仲間かと思った。
彗だって、銀髪だし。
「ああ、君は日本人か」
彼は言い、ほっとしたようだった。
「どこの・・方ですか?」
一応、日本語が通じるようだ。
「日本人だよ。今はこんな頭だけど」
と、彼は髪を触って笑う。
「なんだ染めてんのか、それ」
彗が言った。
「君だって染めてるんだろ?」
「いいや、ナチュラルだ」
「そ・・そうか・・それはごめん・」
コホンと一つ咳払いをして、彼は名乗った。
「僕は、草薙総一郎。う~ん・・よろしくでいいのかな・・?」
片手を差し伸べられたので、僕は慌てて握り返した。
「僕は柊 浮雪。よろしく!」
「ああ、本当にどうしようかと思っていたんだ。僕は今までシロ・・この犬だけど。
と一緒にいて、誰もいないと思ってて・・本当に嬉しいよ!これからよろしく」
「食いぶちが減るな・・」
彗の一言に、二人とも硬直・・。
真実は時として、奇跡よりも痛い。
「あ、・・そのっ・・がんばるよ!水も探すし、食料も!迷惑はかけない」
「うんうん、大丈夫。そうだよね、彗」
僕が振り返ると、彗はじっと総一郎を見て、ポツリと言った。
「いつまで、人の手を握っているんだ。おまえはそんなに人の手を握るのが好きか?」
「!」
総一郎は慌てて、僕の手を離した。
この人は、たぶん僕と同じくらいの歳で・・髪を金髪に染めたりしているけれど、不良と呼ぶにしても、ビジュアル系と呼ぶにしても、迫力が足りない気がした。
どこか、いいとこの坊ちゃんみたいな、ほわーんとした雰囲気を漂わせている。
「浮雪、君たちの部屋はどこだい?」
総一郎はシロを連れて、僕に付いてきた。
部屋に戻ると何時の間にか、彗が戻っていた。
布団を片付けている。
「あ、ごめん。片付けるの忘れちゃっててさ」
「・・」
彗は無言で布団をたたみ終ると、恐ろしくドスのきいた声で言った。
「愛の巣へようこそ!」
「・・・」
「・・」
「ね・・浮雪・・君はあの人とどういう関係なんだ?」
ポツリと総一郎が言う。
「ご、誤解だよ!ふ、普通・・普通の関係だ!・・ね、彗!」
「昨日だって、抱いてやった」
「・・!!!」
「そそそ・・っなんか言い方違うだろ!!」
人の気も知らず、総一郎が真っ白になっているのも気にせずに、彗はフフ・・と笑い
一気にしゃべりだした。
「寝場所は自分で作れ。あと、朝食はそのカンパンと、夕食は缶詰一つ。
水は大切に使え。取りに行くのが面倒なんだ。・・わかったな」
総一郎が、そんな事をちゃんと聞いていたかどうかはよくわからない。
結局、その夜、総一郎は眠れなかったようだ。
翌日に目の下に隈を作っていた。
そういうわけで、僕達には一人仲間が出来た。
