見知らぬ世界⑧(もう一人いる)

ジグソー ジグソーパズル

-ここはどこなんだろう?-

達也兄ちゃんがいる。
お母さん、死んだはずのお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいる。

皆で、車にのってどこかに行こうとしているんだ。

道路の向こうで夕陽が光っている。

よく見慣れた交差点。

スーパーマーケット。

陸橋。

ああ、これは思い出の光景なんだ。
昔もここを通ったじゃないか。

-違う・・-

-違う、こんなところは知らない-

似ているけれど、知らない街。

早く皆に会わなければ。
仲間を集めなければ。
いつかどこかで、世界を共有した仲間達に。

そして、心を一つにして・・。

その時、新しい世界がはじまる・・・。

「浮雪」
「ん・・?」
「もう朝だ」

「・・うん」

いつの間にか寝過ごして夢を見ていたようだ。

とっさに彗の手を掴んで叫んだ。

「ここにいるよね?彗は実在しているよね?」
「なにを言っている・・」
「僕は・・いなくなっていないよね?」

ここはどこ?
知らない世界。

「浮雪…」
彗の顔が近づいてくる。

唇に深く深く口付けられた。

あ、そっか・・彗は恋人だった。

彗の身体を引き寄せて、体温を確かめる。

「このまま一緒にいて・・」
「当たり前じゃないか、おまえを置いてどこに行けると思う」

幸せだ。
たとえ、この世界が全部なくなっても…ここに僕の世界がある。



「浮雪!」
「・・」
「浮雪!!もういい加減起きろよっ!!」
「ん・・?」

目を開けるとそこには総一郎がいた。

「彗・・彗は??」
「あいつなら、下の部屋で弥生と話している」

「・・・」
頭が割れそうだ。

彗がどうして弥生と話しているんだろう・・。
今まで僕と身体を寄せ合っていたのに・・・。

「下に行かないか?」
そわそわしてと総一郎が下に行きたがっている・・だけど・・。

「いかない・・行きたくないんだ。しばらく一人にしてくれない」

彗が・・?
夢・・?

さっきのもみんな夢・・?

夢って何だろう?
人は無意識の具現化だっていうけれど。
なら、僕は・・。

誰がこんなものを見させているんだろう?
ほら、誰かがこうなりなさいと命じているみたいに。

心が勝手に動き出す。

誰のせいでこうなった?
誰のせいでここにいるの?

昨日の事さえ、誰かに操られるように思い出を組み立ててしまう。

昨日あった事はたしかにそうだったのか・・?

彗とオリオン座を見て、総一郎がやってきて・・。

彗が僕にわずかばかりの弱音を吐いた。
僕を包んだ。

それだけじゃないか。
それなのに・・。


「もう一人いる」
弥生が言った。

「もう一人?一人だけなのか?」
彗が聞いた。

「そう・・私達は目的があって集められた。・・誰かに」
「誰かって、誰だよ?目的は?」
総一郎が聞く。

「誰かはわからない。目的は・・」

「皆の心を一つにする事。新しい世界を作るために・・」

そこには、彗と弥生と総一郎がいた。

「浮雪・・」
「何か知っているのか?」

「夢で聞いただけだよ」

「なんだ・・」
総一郎が肩を落とす。

「輪郭が見えないのよ。中身はあるのに・・」

僕には弥生の言葉が真実を言い当てているように聞こえた。

「浮雪、大丈夫か?顔色が悪い・・」
彗が近づいてきた。
「大丈夫だよっ!」

「!?」
額に伸ばされた彗の手を、あわてて振り払ってしまった。

「ふゆ・・」
その時、彗が・・どういうわけか傷ついたように見えて・・。

「え・・あ・・今日、夢見が悪くてごめん・・」
オレンジ色の瞳を見返すこともなく、僕はそう言った。

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