-ここはどこなんだろう?-
達也兄ちゃんがいる。
お母さん、死んだはずのお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいる。
皆で、車にのってどこかに行こうとしているんだ。
道路の向こうで夕陽が光っている。
よく見慣れた交差点。
スーパーマーケット。
陸橋。
ああ、これは思い出の光景なんだ。
昔もここを通ったじゃないか。
-違う・・-
-違う、こんなところは知らない-
似ているけれど、知らない街。
早く皆に会わなければ。
仲間を集めなければ。
いつかどこかで、世界を共有した仲間達に。
そして、心を一つにして・・。
その時、新しい世界がはじまる・・・。
「浮雪」
「ん・・?」
「もう朝だ」
「・・うん」
いつの間にか寝過ごして夢を見ていたようだ。
とっさに彗の手を掴んで叫んだ。
「ここにいるよね?彗は実在しているよね?」
「なにを言っている・・」
「僕は・・いなくなっていないよね?」
ここはどこ?
知らない世界。
「浮雪…」
彗の顔が近づいてくる。
唇に深く深く口付けられた。
あ、そっか・・彗は恋人だった。
彗の身体を引き寄せて、体温を確かめる。
「このまま一緒にいて・・」
「当たり前じゃないか、おまえを置いてどこに行けると思う」
幸せだ。
たとえ、この世界が全部なくなっても…ここに僕の世界がある。
「浮雪!」
「・・」
「浮雪!!もういい加減起きろよっ!!」
「ん・・?」
目を開けるとそこには総一郎がいた。
「彗・・彗は??」
「あいつなら、下の部屋で弥生と話している」
「・・・」
頭が割れそうだ。
彗がどうして弥生と話しているんだろう・・。
今まで僕と身体を寄せ合っていたのに・・・。
「下に行かないか?」
そわそわしてと総一郎が下に行きたがっている・・だけど・・。
「いかない・・行きたくないんだ。しばらく一人にしてくれない」
彗が・・?
夢・・?
さっきのもみんな夢・・?
夢って何だろう?
人は無意識の具現化だっていうけれど。
なら、僕は・・。
誰がこんなものを見させているんだろう?
ほら、誰かがこうなりなさいと命じているみたいに。
心が勝手に動き出す。
誰のせいでこうなった?
誰のせいでここにいるの?
昨日の事さえ、誰かに操られるように思い出を組み立ててしまう。
昨日あった事はたしかにそうだったのか・・?
彗とオリオン座を見て、総一郎がやってきて・・。
彗が僕にわずかばかりの弱音を吐いた。
僕を包んだ。
それだけじゃないか。
それなのに・・。
「もう一人いる」
弥生が言った。
「もう一人?一人だけなのか?」
彗が聞いた。
「そう・・私達は目的があって集められた。・・誰かに」
「誰かって、誰だよ?目的は?」
総一郎が聞く。
「誰かはわからない。目的は・・」
「皆の心を一つにする事。新しい世界を作るために・・」
そこには、彗と弥生と総一郎がいた。
「浮雪・・」
「何か知っているのか?」
「夢で聞いただけだよ」
「なんだ・・」
総一郎が肩を落とす。
「輪郭が見えないのよ。中身はあるのに・・」
僕には弥生の言葉が真実を言い当てているように聞こえた。
「浮雪、大丈夫か?顔色が悪い・・」
彗が近づいてきた。
「大丈夫だよっ!」
「!?」
額に伸ばされた彗の手を、あわてて振り払ってしまった。
「ふゆ・・」
その時、彗が・・どういうわけか傷ついたように見えて・・。
「え・・あ・・今日、夢見が悪くてごめん・・」
オレンジ色の瞳を見返すこともなく、僕はそう言った。

