今、飛行機はギアナ高地へ向かって飛んでいる。
「仕事を受けてくれて、礼を言う」
リヒャルトが言った。
「なに、オレたちの仕事じゃないと思ったんだが、場所が場所だからな」
初めに依頼内容を聞いたときは、銀行強盗でもやるのかと思ったものだ。
しかもなぜ、ただの盗難事件にSSGが出しゃばるのかと疑ったものだが、お宝の内容と保管されてしまった場所を聞いたとき、すべての符号が一致した。
「これは、間違いなくオレたちの仕事だ」
お宝は、”幻の箱”と呼ばれている。ただの箱だ。しかし、中身は誰も見たことがないという。
それだけならガセネタも著しいが、直感的にユウはSSGに連絡をとった。
老人の怪しさはもちろんのこと、お宝が隠された場所が有名銀行の貸金庫でも、どこかの倉庫でもなく、世界の秘境の一つ、ギアナ高地だったからだ。
そして、ユウのところに老人がやってきた数日前から、ギアナ高地付近の磁場が歪んでいるのをSSGの情報部が捕らえていた。
それも、日に日に広がっているという。
「機械部長の潤一が言うには、時空を歪ませるほどの強さだ。このままほっておいたら地球全体にダメージを与えるかもしれんとのことだった」
「うーん、そいつは大変だ」
「ああーー。どうりで・・・オレの眼に写る景色がぐるぐる回っている・・・」
ドアの破壊とともに飛んできたRQが、ようやく目覚めたらしい。
あの後、貨物でも乗せるかのように、飛行機の中へ放り込りこまれたRQだった。
「ピンクさんは、また猫長官を怒らせちゃったのかな?」
「ふー。ユウの足が速いと関心しているんで、オレは足も速いが手も早いって自慢してやっただけなんだぜ~」
頭から出血していたはずなのに、いつの間にか治っている。
できた傷もすぐに治ってしまう特異体質なのだ。
今まで横に寝かされていたせいで、ピンク色の長髪が寝癖で片方跳ね上がっている。
「今気づいたのだが、おまえは・・・体の傷は治るのに、髪は治らないのだな・・」
事の他、深刻な顔でずれた発言をするリヒャルト。
ああ、この人相変わらずだと思いながら、オレはヘッドホンに耳を澄ました。
「もしもし、ユウ。場所的にはギニア高地の崖のどこかなんだよな。そのお宝を隠したって洞窟は」
「そう、たしかこの円のどこか」
この場所に同行できなかったユウには、念のためタブレットを渡してある。
モニターに写る地図の上に描かれた○の付近を目指して、オレたちは飛んでいた。
「に、兄さん!恐竜発見!」
ミラーが窓の外を眺めて、悲鳴をあげた。
「ミラー、こんなところに恐竜なんているわけないだろ」
「ああ、あれはたしかプテラノドンという奴だ。この前、ぬいぐるみをもらった」
窓の外を見ながら、さりげなくスマホの写真を見せるリヒャルト。
恐竜のぬいぐるみの隣に、仲のよさそうなテディベア2体と黒猫のぬいぐるみが置いてあるのも注目だ。
この人が、ぬいぐるみを?!
眼差しだけで人を殺せそうなこの人がっ?
などと驚いている場合ではなかった。
ガクン!と機体に衝撃が走ったかと思うと、なにか凄まじい力で揺さぶられている。
「な、なんだ!」
「だから、兄さん。プテラノドンだよ!」
にわかには信じがたいが、何者かが飛行機を掴んでいることは確かなようだ。
「よーしミラー。引っ付いてる奴を攻撃するぞ!」
「ダメだよ、恐竜愛護協会に訴えられちゃうよ!」
「そんなもんいるわけないだろう!」
ミラーと言い合っている間に、飛行機は方向性を見失い、急速に下降し始めた。
「き、気持ち悪い!!」
とんでもないGが身体にかかってくる。
そんな時だった。
内部から飛行機の天井が破られたのだ!
「オレは乗られるのが嫌いだ!!」
飛行機破壊魔と思われるRQが叫びながら、機外へ飛び出す。
「うわぁぁー!天井がっ!ミラー君、かっこよく脱出!」
ミラーが脱出というより気圧の違いから外へ吹き飛ばされていった。
「ミラー!!」
そして、もう一方を見るとRQが巨大な生き物の背に乗り、パンチを浴びせていた。
「オレの上に乗ろうなんざ、100万年早い!」
強打に耐え切れなかったのか、恐竜と思われる生き物は翼を広げて大空高く飛び立っていく。
「あいつっ!恐竜にまで抱きつく癖があるのかっ!」
なんだか凄まじい表情で呟いたかと思うと、リヒャルトが手に持った鞭で恐竜の足を捕らえた・・・と思ったら、なんと鞭をブランコ状に結んで、グライダーを楽しむ人のような姿勢のまま、恐竜&RQとともに大空へ消えてしまったのだ。
「はぁ??」
操縦不能になりかけている飛行機の中で、どうにか操縦を試みるオレの耳に静かな声が入ってきた。
「ジャン君、きみは一人じゃないよ。まだ私がついている」
ユウだ。
タブレットを持って、ボストンで紅茶を飲んでいるユウだ!
「悪いけど、慰めにならないだろーー!!」
ダメだ、本気で泣きたくなってきた。
だけど、こんなところで諦めたら、トレジャーハンターJ&Mの名がすたる。
地上に近づくにつれて、眼下に湖らしきものが見えてきた。
そうだ、この飛行機は水陸空に変形するのだ。
一か八かやってみるか!
「ミラクルチェンジ!!」
