~後日談~
「ギアナ高地の磁場の歪みですが、消えてますね」
まことにあっさりと、SSGの機械部長潤一は言った。
潤一によれば、それはデータのミスではなかったのかと疑うほどに、何も痕跡を残さず消え去ったという。
(それと、もう一つ。不思議なことに潤一の異母兄の占い師兎兎は、磁場の乱れが消える前後から眠りに落ちているという。きっといつものお昼寝が長引いているだけだ、と潤一は語った)
「なんとも不思議な話だ。でも、なんか素敵な思い出が出来た気がする」
満足そうに呟くRQの隣で、リヒャルトはあいかわらずプリプリと怒っていた。
「私は、よく覚えておらんが、とても不快な覚えをしたような記憶がある。きっとおまえのせいだ」
「例えば、オレが誰かと浮気したり、勝手にどこかに消えたりしたり??」
「・・・!」
リヒャルトの返事は顔面クッション直撃だったが、RQは嬉しそうに微笑んで
「あんたみたいな魅力的な恋人がいるのに浮気なんかするもんか。もしオレがどこかに行っても、きっとリヒャルトは待っていてくれるだろう。オレはきっと帰ってくるからな。愛しているあんたの元に」
「か、勝手なことばかり言うな!馬鹿っ!!」
怒鳴るリヒャルトをひょいと膝の上に乗せて、RQはその細い身体に頬を寄せた。
「どこにもいかねぇよ」
「・・・勝手に行ったら許さんからな・・」
リヒャルトの手がRQのピンク色の髪をぎゅっと掴んだ。
「まったく、変な話だ」
あの日、ユウが来た時から、なにか魔法にでもかけられたような気分だ。
「兄さん!入れ歯たちが直ったよ!」
ミラーが入れ歯を持って現れた。
「入れ歯・・・入れ歯って何に使って壊れたんだ?」
「・・・そういえばなんだっけ?」
たしか、洞窟からミラーの入れ歯たちが現れたのだった・・・。
「ちょっと、思い出せたかもしれない」
「ええっ!すごいや兄さん!」
「でも、洞窟になにかあったことくらいしか・・・ダメだ。風呂にでも入って頭休めてくる」
そうだ、風呂でも入ればさっぱりとした気分になれる。
そう考えて、湯船を見るとすでに湯が入っている。
「おっ!気がきくな」
その数分後・・・。
またオレは弟の名を叫んだ。
「ミラーーーーーーーー!!!」
「もう勝手な行動は慎みください!」
サングとトトはお互いの臣下にこってりと絞られていた。
「あの時、アルキュード候が異常に気がつかなかったら、お二人は狼に食べられていたかもしれないのですよ」
「だから!どうしてあいつの名が出てくるんだ!」
不仲のアルキュード候ジュールの名を出されて、サングは不満そうだ。
「まぁ、ジュールが来てくれてよかったよ・・・」
普段はあまり話さない異母弟だが、トトは素直に感謝した。
サングとトトは、森の入り口で倒れているのを発見された。
バストールの王宮から国王とそのご友人のイルミーネの国王が消えたのだ。
トトの異母兄弟であるジュールは、すぐに単身捜索を開始した。
そして、冒険心にはやるサングとオカルトに興味を持っているトトなら・・・と禁断の森に向かったのだ。その勘は当たった。
「べつにあいつが来なくても・・・」
あいかわらず、ブツブツ言っているサングをたしなめながら、トトはあの時の不思議な出来事を思い返していた。
「私は、あの時・・・とても面白い人たちと一緒にいた気がするんだ。たしか親切な冒険家と痴話喧嘩している大人と・・・」
「オレもよく覚えてないけどさ、面白い奴と一緒だったって気がしている。それと変な道具を使う奴がいてさ」
二人は顔を見合わせてくすっと笑った。
「同じ夢を見ていたんだね、私たちは!」
「いや、きっとどこかの世界の現実さ。だって、オレの拳があいつと一緒に戦ったのを覚えてる!」
まったく反省していない二人を見て、臣下たちもとうとう匙を投げたようだ。
すぐにため息をついて部屋を出て行った。
その後、二人はあれやこれやと話をした。
「でもね・・・」
とトトが恥ずかしそうに目を伏せる。
「私は、あの世界で私が望んだものを手に入れた気がする。きっとそれはきみとのかわらない友情と信頼なんだろう」
「そういえば、宝物探しにいったんだっけ。でも、どんなものよりもこの気持ちが一番欲しかった。オレたちはずっと、ずっと、永遠に友達だ。どこの世界に行っても!」
きっとそれは、どんな恐ろしい魔法も打ち破ってしまう奇跡。
「きみに出会えてよかった」
「これからも一緒にいよう」
この魂が続く限り。
どの世でも、きみの一番近くに生まれよう。
そして、共に生きよう。
命が続く限り。
日の差さない禁断の森に光がさしたのは、それからすぐのことだった。
