「…本当にこの道でいいのぉ~~~??」
「この地図によるとこちらで間違いはないはずだ」
「だって、どんどん人がいなくなってくるよぉ~~」
二人は、参道から外れた山道を歩いていた。 途中で簡易的な地図をもらったから、それを信じて進んでいたのだが…。
弥山でのことが二人の脳裏にのしかかる。
「帰れるよね?今度は?」
「うーん。また参道に戻れば帰れます」
「本当??」
そろそろ足を引きずりはじめたトト。
「道は…」
すると、道の先に二人の老夫婦がいた。
「わっ!誰かいるよ!!」
「道を聞きますか?」
しかし、どう見ても二人とも迷っている様子だ。
しかも…
「どうしようあの人たち、私たちの後をついてくる…」
「こちらの道が正しいのかもわかりません…」
申し訳なさを感じながら進んでいくと、細い階段があった。
山から下りるためのものであることはわかるのだが、道が続いているのかはわからない。
すぐに行き止まりに行きついた。
「なんてこと…あの人たち向こうへ行くよ」
「今度は私たちがあの人たちを追う番ですね」
トトも、なんとジュールも杖をついている。
「は、早く…旅館につきたいよ」
途中にロマンチックな公園と花壇とベンチがあったのだが、二人ともそんな気分ではない。
「初めはお風呂ね、次にビール…」
「ベッドで横になりたいです…」
「暑いよぉ、暑いよぉ…」
「私の足ももう…限界かもしれない」
「…」
「…」
そして、会話もなくなった頃。
最初に帽子を買った土産物屋が見えてきた。
「つ、杖…返さないと」
よろよろと、店の入り口にやってきたトトを見て、店の女性が「お茶でも出しますよ」 と言って冷茶を運んできてくれた。
「ああ、ありがとう。旅人が山の中で一軒家を見つけた時の気持ちだよ」
「うん、なんか生きてることがありがたい…」
ジュールは額の汗をぬぐいながら、そういった。
二人とも一杯のお茶を飲んだ後、別人のように生き返った。
そうして、お店で勧められた豆のお菓子を買って、今夜泊まる旅館へ向かう。
「早く温泉に入りたいよ」
でも、旅館に早く着きすぎたので1時間くらいロビーにいて、その後温泉に入った。
よく足をもんで…。
「痛くなったところをやさしく摩るといいよ」
ジュールの言葉を聞きながら、トトの目はいくつもの温泉に向いていた。
ここは、泡風呂や薬草風呂、大きなお風呂…サウナまであるのだ。
「サウナは苦手だから入らないとして」
いくつものお風呂を楽しもうとするトト。
ジュールは、ぼんやりと薬草風呂に浸かっている。
「あー、おじさんみたいー」
「ひどいなぁ、私より年上なのに!」
トトは、にやにやとしながら子供たちが集まっている場所に片足を入れる。
「わっ!この人、入ったぞ!」
「るるーん」
トトは満足気に口笛を吹きながら、するりとアルミ製の風呂に入った。
そこには「水風呂」と書いてある。
トトは、水風呂が大好きなのだ。
問題なく肩までつかって手足を伸ばす。
みんな、どうしてこんなに気持ちのよいところに入らないのだろう?
トトは、いつも水風呂に一人しか入らないのを不思議に思っていた。
子供たちの尊敬と奇異に満ちた視線がたまらない…。
私は、ここが好きなだけなんだけどなぁ。
気が付くとジュールが薬草風呂から出て、水風呂の前にいた。
「身体が冷え切る前に出たほうがいい…」
「ふーん」
トトが出た後、子供たちがきゃーきゃー言いながら、水風呂に足をつけたりしている。
「どうしてそんなに水風呂が好きなのかな?」
「お風呂場って暑いでしょ。水風呂に入ると身体がひやひやしていいんだよ」
温泉から出た二人は、外へ夕食を食べに出た。
なるべく地元の名物を普通のお店で。 というトトの希望により、旅館のすぐ近くにある居酒屋へ向かった二人。
讃岐名物の骨付き鶏(親鶏)と、タイラギ貝の刺身を頼んだ。
「タイラギ貝って、初めて食べるね。ホタテをもっとさっぱりさせた感じ」
「貝柱を食べるって面白い。私はホタテよりも好きかもしれないな」
そして、骨付き鶏。
これは、鶏を油で揚げ焼きするため、エプロンをつけて食べる。
「油が少ないって書いてあったから親鶏にしたけど、これは正解?」
とジュールが聞けば、トトが
「鶏の味がしっかりと出ている感動という意味ではこれは大正解だよ!!」
味は塩と胡椒である。
付け合せにキャベツがついているのが特徴だ。 これが口の中をさっぱりさせる。
鶏のうまみを最高に味わえる料理に二人とも大満足。
そうして、ビールで乾杯!
「お酒なんだよーーー!!」
「いぇーい!お酒解禁に乾杯!」
もう明日は歩かないのだ。もう…歩かないぞ!!!
ジュールの心から重荷が降りた。 ああ、もう兄上のことを心配しなくてもいいんだ。 あとは迷子を心配するだけでいいんだ。
この時点でジュールは、やはり兄上の心配ばかりしていることに気付いていないのだった。
いよいよ明日は最終日。 高松へ。

