「なんだこれ?」
洞窟の一番奥についたRQとサングは、その行き止まりの壁に彫られたレリーフを発見していた。
”この奥には汝にとって最強の生物がいる”
RQが続きを読む。
”命が惜しければ引き返せ。その生物を殺せば宝は手に入らない”
「意味がわかんねぇな」
そうして、サングのほうを見た。
「オレに聞くなよ!」
「そりゃ、ま、そうだ」
同時に、二人の耳に悲鳴のような声が聞こえた。
「なんだ!誰か叫んでる」
「リヒャルト!」
間違いなく、それは、リヒャルトとトトの悲鳴だった。
「あいつが戦っているのか!」×2
「兄さん!!」
聞きなれない声にぎょっとして、二人が後ろを振り向くと、歩く入れ歯をパコパコと従わせながらこちらへ走ってくるミラーの姿があった。
「今の兄さんの声だ!」
「ジャンもいるのか」
「タイミングよく現れたミラー君、兄さんの危機を救うために再登場!二人を追ってきたんだよ」
ミラーは、そう言うと入れ歯たちを一列に並ばせた。
「行け!入れ歯たち!兄さんを救うんだ!!」
レーザー光線が一斉に入れ歯から発射されるも、壁がそれをはじき返した。
「くそっ!これも幻獣なら・・・」
サングが拳をたたきつけるも、壁は強固でびくともしない。
「どいてろ!」
RQが渾身の力を込めて、壁に両手を当てても何も起こらなかった。
「力を吸収してやがる」
ギリっと悔しそうに歯軋りをするRQ。
「ちょっと、待って、このレリーフ。最強の生き物を殺せば宝は手に入らない・・・ということは兄さんたちと戦っている何かを倒したら、何も手に入らないって事?」
ミラーが神妙に呟いた。
「宝って、それがどんな宝がしらねぇが」
サングが再び壁に拳を当てながら、叫んだ。
「オレはあいつと戦うほうが大事なんだよ!!あいつが戦っているなら、オレはいつでも隣にいる。そして、共に戦う。あいつだけに最強の生物を独り占めにさせてたまるかよ!」
RQも叫んだ。
「気が合うな、ちびっ子!宝なんてしったことか、オレもMYハニーと戦いてぇ!あいつが戦っているのにそこにオレが登場しないのは気にくわねぇ!!」
「ぎょ!僕も兄さんと冒険してたいもんね!危なくてホットな冒険をさ!だから、兄さん、今そこにいくよ!・・・とはりきるミラー君!」
ミラーは入れ歯を総動員して、壁を削り始めた。
・・・・・・・
「あれは、サンの声だ!」
「・・・あいつの声もした・・・」
「どういうわけかミラーの声もしたぞ!」
トトが最後に発見した一文は恐ろしいもので
”宝が眠っているあちら側には最強の生物が待ち構えている”
というものだった。
しかし、こちら側から壁を破壊すれば、この洞窟自体が崩れてしまう。
加えて、はぐれた仲間たちの悲鳴があちら側から聞こえてきたのだ。
「どうすればいい!」
こうしてはいられない。
向こう側に進む方法はないのか、この壁の向こうへ!
リヒャルトも顔を強張らせている。
RQが向こう側にいるのだ。
救出したくてもできない歯がゆさは同じだろう。
だが、ただ一人。
トトだけが、その壁の前に腰を下ろした。
「・・・サン」
そうして、じっと目を閉じた。
「我々はここで待つしかない。この壁を破壊すればこの洞窟自体が崩れてしまう。それに、もう一度戻って崖を登って向こう側にたどり着くことができても、おそらくはすべてが遅すぎる・・・」
「・・・っ」
子供とは思えない冷静な口調。
リヒャルトも深く息を吸い込んだ後、
「トトのいうとおりだ。我々はここで待つしかないようだ」
と言った。
「信じて待つ・・か」
あの弟のことだ。最強の生物を目の前にしても、不思議な道具でうまくやるかもしれない。
しかし、どうしても不安が拭えない。
「昔、サンと約束したんだ」
ふと、トトが呟いた。
「もし、どちらかが危ない目にあったとして手をかせない状況なら、信じて待つと。
私の親友がこんなところでやられるわけがない。だが、もし何かあった場合は・・・」
トトはため息を一つついた。
「彼は、それまでの人だったということだ」
オレには少しずつわかってきた。
トトが子供っぽくない妙な子供だということが。
子供という立場で彼は生きていないのだ。
さらに、こいつはおそらく何度も命を削られるような危ない目にあってきている。
こいつの親友も同じなのだろう。
その親友とは絶対的な絆で結ばれている。
・・・それは、戦友と呼ばれるものにも似ていた。
リヒャルトにも、それが通じたらしい。
「そうだ。あいつは私を唯一本気にさせた男。こんなところでむざむざやられるわけがない。
第一やられたら、私が許さない。私自身の手であいつを葬ってくれる!」
リヒャルトの言葉は、あいかわらずツンツンしていたが、妙にこの時愛情とやらを感じてしまったのはなぜだろう。
ともかく、オレにとっては唯一の兄弟のミラーは困った奴で変人だけど、それでもあいつは誰よりも優秀な頭脳と前向きな性格をしている。
昔から、変わっているあいつには友達ができなかった。
だから、あいつはいつも一人で機械いじりをして遊んでいた。
両親もあいつを心配したけど、オレはどこかあいつを信頼していた。
ミラーなら、大丈夫さ。
今も、その気持ちは変わらない。
